2010年9月 1日 (水)

はじめに

備前焼を主に27年陶芸をしてきました。
今においてそれが一体何なのかよくわからない。
この先何を作れば良いのか確信の持てるものは何一つない。
いつのまにか振り出しにもどった。いや多分それ以前からのスタートのようだ。
でもだからこそ何か出来るようなきがする。
今までの自分を捨て。「0」から始めればきっと何かが生まれるはずだ。
「やきもの」とは何か、また、この現代においてどうあるべきものなのか、その本質を問いながら今の僕の仕事と平行し、このブログを進めようと思います。


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2010年9月 7日 (火)

備前焼の技法

備前焼の技法について語るべきことはほとんどない。
ただ備前の粘土で成形して窯に入れて焼けばいい。赤焼や窯変は松割木などの薪で焼けばいい。緋襷は藁を巻いて灯油や電気窯で焼けばいい。
その他青・白備前等特殊なものはそれなりの知識を応用すれば誰にでも焼けるだろう。
僕がこの素材を選んだのは、そのあまりにも原始的で簡単なところ故であろう。
当時誰でもがすぐに陶芸作家になれたのだから。
しかし現在ではそうはいかない。何でもが高級品を求めていた時代とは違い、今は何でもが控えめなエコ時代、この時代に合わせて今こそ備前焼の真の技法を探求しなければなるまい。
そんな訳で、どうすれば低燃費で低価格で楽しい備前焼が作れるか考えていこう。
まずは粘土から。原土を水槽に入れて溶かし、小石等を取り除いて石膏鉢で干す、と言いたいところだがけっこう面倒くさい。
粘土屋さんで粘土を買う方が種類も豊富で性質も聞けるので便利である。
あとは得体の知れない山土など混ぜてやると面白いだろう。

去年より準備してきた登り窯を今年正月より火入れした。焼いたのは手前の部屋(ウド)だけだが内寸幅205㎝、奥行き260㎝、高さ180㎝ある。
長時間焼けば焼くほど良くなる備前焼を、いかに短時間で魅力を引き出すかがこの窯のテーマである。
使った粘土はもちろん粘土屋さんで買う一番安い粘土、鉄分が多くて耐火度はやや低い、それに再生土等を混ぜ合わせたもの。
1年以上焚いてないのでかなり湿気ていたが、ウドだけなので空焚きせず、そのまま詰めた。
今回は陶彫やオブジェはなし、壺と花入れ、コップに皿、茶器、徳利少々だけだ。


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1日PM9時に火入れ、ガスバーナー小火で60時間湿気とり、5日0時180度から割り木と併用、6日PM3時750度でガスが終了。
7日0時1000度、PM12時1100度で追い焚き開始、最高温度1130度でPM6時終了。
割り木数450束、プロパンガス50キロ4本。


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なおこの窯の温度計は後ろの壁のくぼみの中にセットしているので実際の温度よりかなり低い。
温度計の温度は窯焚きしやすくするための目安であり、実際に焼けているかどうかは自分の目で判断するしかない。


 

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やはり窯変が弱く、色も浅い。
あと500束焚けば良くなっただろうが、それではこの研究の意味がない、窯変に頼らなくても良い新しい魅力を引き出すことが出来れば・・・。


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2010年9月 9日 (木)

灯油窯

灯油窯は主に陶彫やオブジェの研究と備前焼の緋襷を焼くのに使っている。
ここでは何もしなければ粘土の性質のみの焼き色以外はない。
大きさは内寸幅90センチ、奥行き100センチ、高さ80センチ、トロッコ付きでバーナーが4基ついている。
ここでもかなり大きな作品を焼いているわけで、これがなかなかバカにできない。今までに数回爆発させたことがある。
原因は大きな作品を焼く時に、まだ水分が完全に取れていないうちに温度が上がったためで、400度前後に起こる。
灯油バーナーは低温での調節が難しいので注意が必要だ。
このたび8月末に焚いた窯を紹介しょう。


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今回は中型の陶彫3点と皿、碗、コップ、ぐい吞少々、あとは陶芸体験の作品だ。
陶彫は塗り土などの細工をするのでそのまま置くだけだが、緋襷は一つずつ藁を巻いていくので大変だ。
最近では藁くずや籾殻を使ってなるべく緋色が多く出るようにしている。


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バーナーは一基ずつ点火、100度内で15時間で二基目点火、6時間後170度で三基目、3時間後210度で四基目、合わせて24時間。
大作を焼く時にはもっと時間をかけるように、とにかく湿気とりは時間をかけるにこしたことはない。
あとは700度まではゆっくり、素焼き温度を超えたら素早くあげる。
高温を長くすることは非常に燃料を消費する、窯変をねらう訳ではないのでなるべく早く切り上げたい。
今回の焼成時間は41時間、最高温度1270度。

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陶芸体験の作品、いろんなアイデア、ユーモアと出会える。

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藁くずをいっぱい詰めて伏せ焼き、皿は籾殻を盛って焼いた。


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2010年10月 7日 (木)

陶彫制作

陶彫を制作するにはまずマケット(模型)の制作から始まる
頭の中のイメージを紙に描いたり、手のひら程度の粘土で形にしたり、ある程度煮詰まったらいよいよ30〜50センチぐらいの小作品を作る。


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粘土は鉄分の多い胃備前土80%(備前1号)、信楽土20%(古信楽細目)を混ぜ合わせてベースで使い、他に鉄分の少ない備前土(備前マルE)、磁土(美濃磁)を塗り土に使っている。


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塗り土するために金切り鋸の刃(塩ビ用)を使っている。自由に曲がるのでなかなかいい。

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塗り土は粘土が乾かないうちに手早く2、3回塗り込み、仕上げは少し乾燥させてからじっくり行なう。

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2010年12月15日 (水)

陶彫制作 2

模型が完成したところでいよいよ大作に挑む。
といっても灯油窯の大きさの都合で高さ80センチ以内に限られてしまう。
分解して組み立てればもっと大きくできるが、最近年齢のせいか面倒くさいことはしたくない。
よって今回は2点組でいこう。

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模型から寸法をとり、計算するのは最初の底面だけ、あとは成り行きに従うのだ。
たとへ計りながら作ったとしても粘土の収縮によって必ず誤差が生じるのだ。


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気候と粘土のコンディションによるがここまで作るのに10日ほどかかってしまった。
全体が見えてきたところで2作目に取りかかる。


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底面はしっかりと叩いて伸ばすこと。あるていどは土台を固めてから積み上げる。


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内底の仕事は手のとどくうちにすませよう。
1作目にもどって、ぼちぼち下が固くなってきたので塗り土をしなければ。


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塗り土をするタイミングは固すぎても軟らかすぎても駄目、ちょうど良い時期を見計らって行なう。
固くなっってしまった粘土に水気の多い土を塗るとヒビ割れの原因になるし、柔らかすぎると鋸の目がつぶれて面白くない。
小さい模型では形が出来上がってから始めれるが、大きくなると積み上げ途中から下から始めなければならない。


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これほどの塗り土をするには相当たくさんのヌタ(粘土を水でドロドロに溶かしたもの)が必要だが、よく練られた粘土は水に溶けにくく、水をつけてこねたり電動ロクロにかけたりしても大量につくるのは大変だ。
もっと簡単にヌタを大量につくるには、粘土を平にしたものを大量につくり、天日に干して完全乾燥したものを水につければ簡単である。完全に乾いた粘土は吸水性が良く、粉状にしなくても簡単に溶けるのだ。
したがって、あらかじめいろんな種類の粘土片の完全乾燥をつくっておけば便利である。


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今回の土は模型と同様、備前1号(鉄分が多い)80%と古信楽土細目20%を混ぜたものをベースに、美濃磁器土と、備前マルE
(鉄分の少ない)土を混ぜたものを塗り土に使用。


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高さ80センチで完成、計画通り。色は焼いてみなければ分からない。


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再び2作目へ。
同じ様に作ろうとしても多分ぜんぜん違ってくるだろう。
石膏型にすれば近いものになるだろうが、そこまでする必要はない、むしろ違って当然だと思う。


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1作目より背が高くなりそうだ。


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塗り土しながら頂上まで積み上げ、フタをする。


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フタを少し固く乾かして鋸目をつけてヌタで接着する。
内側に手が入らなくて粘土を締めれない時はこの方法が確実だと思う。


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1作目と同じ塗り土。


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1作目が焼きあがった。
これを焼くのは3ヶ月後の予定。


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2010年12月23日 (木)

灯油窯 2

窯詰め
まず大きな陶彫から場所を確保、あとは大きな隙間ができないように全体を組み立てる。
窯の半分は棚を組んで陶芸体験の作品を詰めた。

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窯焚き
陶彫の大きさが前回よりも大きいので低温では慎重にならねばならない。
1基目点火で100度以内を19時間、2基目点火で150度まで6時間、3基目点火で200度まで6時間、4基点火で760度まで13時間かけ、素焼き温度を超えたら一気に最高温度1280度まで4時間、合計約48時間焼成した。

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窯開け
前回より最高温度を10度高くしたからか、焼ムラも少なく焼き色も良い。

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陶彫の出来はどうだ。

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思っていたよりシマ模様のコントラストが弱い。
あんまり強すぎるのも嫌なので微妙な差にしたのだが・・・、まぁしばらく風雨にさらして時間がたてばちょうど良くなるだろう。


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2011年3月 4日 (金)

型もの

干支などの置物は数多く作るため、石膏型が必要になる。
まずは原型作り、なるべく型に取りやすい形にしたい  


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原型をほどよく乾燥させて固くし、半身を粘土に適当に埋めて仮型を作り、少し乾燥。
正方向から見て引っかかりそうな場所に粘土で寄せ型をつくる。寄せ型は常に仮型にかかるように。

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完全に引っかかりがなくなったら石膏を掛けていく。水を入れた容器に石膏を少しづつ入れ、水と同量弱ぐらいで泡立たないようにヘラでよく混ぜる。
石膏は少量づつ溶き、時間をかけて厚みをつけること。

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裏返して粘土の仮型を取り除き、石膏型から原型を外し、粘土の寄せ型を取り除いてから石膏型に戻す。


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石膏型にぬた(離型剤、粘土をどろどろに溶かしたもの)を塗り、少し乾燥させ、寄せ型に石膏を流し込む。
石膏は数回に分けて少しずつ流し込むのが望ましい。石膏も多小収縮するので一度にするとゆるみが生じる恐れがある。

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これで半面の型が完成。もう半面も同じように粘土の寄せ型をつくるのだが、今度は型の外にかかるようにすること(石膏の流し口にするため)。

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離形剤(ぬた)の塗り忘れに気をつけて石膏をかけていく。

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型を外して粘土の寄せ型を取り除き、離形剤(ぬた)を塗って再び型を合わせる。

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寄せ型に石膏を流し込む。一度でするより数回に分けて流し込むほうがしっかり入る。

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型を外して水洗いする。修理が必要な場合は小さな平筆に微量の水を染ませて石膏の粉をチョンとつけて塗るように付ければうまくいく。

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粘土の張り込みは入りにくい場所から、木目の細かい粘土を薄く張り、粗土で厚みをつけると良い。

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合わせ面に鋸目などで引っ掻き、ぬたをしっかりつけて合わせる。

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底を粗土で作る。空気の抜け穴は残すこと。

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外型を外し、寄せ型を外し、バリを取って修正、乾かしながら仕上げていく。
型だけでは完全なものは作れない、あくまで土台のコピーにすぎない。仕上げで形が決まるのだ。

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完成、一つ一つ違って当たり前。だから面白いのだ。

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